「職場で『5Sを徹底しよう』と言われるけれど、結局何をすればいいの?」
「整理整頓と掃除をしておけば、5Sになるの?」
工場や倉庫で働き始めたばかりなら、そんな疑問を持つこともあると思います。
5Sというと、「職場をきれいにする活動」というイメージがあるかもしれません。
もちろん、職場をきれいに保つことは大切です。
しかし、工場・倉庫の現場で20年以上働き、改善活動にも10年以上関わってきたわたしは、5Sは「きれいにすること」だけが目的ではないと考えています。
たとえば、普段の仕事でこんなことはないでしょうか。
- 工具を探している
- 必要な物を取りに何度も往復している
- 置き場所が分からず迷っている
- 不要な物が作業スペースを圧迫している
- 通路や作業場所に危ない状態がある
こうした日常の「ちょっとやりにくい」を減らし、安全で仕事をしやすい状態にすることも5Sの大切な役割です。
見た目がきれいでも、毎日探し物をしているなら、5Sはまだ途中です。
この記事では、工場・倉庫における5Sの基本から、現場で見つけやすい改善例、新人でも取り組みやすい改善の進め方まで紹介します。
なお、この記事でいう「仕事を楽にする」とは、手を抜くことではありません。
探す・迷う・戻るといった無駄や、作業のやりにくさを減らすことです。
この記事でわかること
- 工場・倉庫における5Sの意味
- 整理・整頓・清掃・清潔・しつけの違い
- 新人でも見つけやすい5S改善の具体例
- 「探す・迷う・戻る・危ない」を減らす考え方
- 5S改善を進める5つのステップ
工場・倉庫の「5S」とは?5つの意味を理解しよう
5Sとは、一般的に「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の5つを指します。
それぞれの言葉の頭文字が「S」になることから、5Sと呼ばれています。
ただ、言葉だけ覚えても、現場で何をすればいいのか分かりにくいと思います。
そこで、それぞれを実際の仕事に置き換えて考えてみましょう。
整理|「必要な物」と「不要な物」を分ける
整理とは、ただ物を片付けることではありません。
必要な物と不要な物を分けることが基本です。
たとえば作業場所に、長期間使用していない治具や工具、古い資材、不要になった書類などが置かれていないでしょうか。
治具とは、作業をしやすくしたり、部品などの位置を決めたりするために使う道具のことです。
物が増えれば、必要な物が見つけにくくなり、作業スペースが狭くなることもあります。
そこで、
「これは今の作業に必要なのか?」
という視点で確認します。
ただし、新人の方が自分の判断だけで物を捨てないでください。
不要だと思う物があっても、職場の基準に従い、上司や責任者へ確認しましょう。
整頓|必要な物を「探さず取れる」状態にする
整理したら、次は整頓です。
整頓というと、工具や備品を一直線にきれいに並べることだと思うかもしれません。
しかし、見た目がきれいでも、使いにくければ仕事は楽になりません。
必要な物がどこにあるか分かる。
必要なときに取り出しやすい。
使った後も迷わず戻せる。
そうした状態を作ることが大切です。
たとえば、よく使う工具が棚の奥にあり、ほとんど使わない物が手前にあるなら、配置を見直せないか考える余地があります。
ただし、置き場所を自己判断で変更するのは避けてください。
安全や他の作業への影響もあるため、職場のルールや責任者の判断を優先します。
清掃|掃除しながら「いつもと違う」に気づく
清掃は、ゴミやホコリ、汚れなどを取り除いて、作業場所をきれいにすることです。
ただ、わたしは清掃するときに、「いつもと違うところはないか」を見ることも大切だと思っています。
- 普段ない場所に部品が落ちている
- いつもは見ない汚れがある
- 設備や道具が傷んでいるように見える
清掃しているからこそ気づけることがあります。
清掃は、現場を見る機会でもあります。
異常と思われる状態を見つけた場合は、自己判断で処置せず、職場のルールに従って報告・確認してください。
清潔|良い状態を「維持できる仕組み」にする
一度整理整頓して、きれいに掃除しても、1か月後に元へ戻ってしまえばもったいないですよね。
そこで必要になるのが清潔です。
整理・整頓・清掃によって作った良い状態を、継続して保てるようにします。
たとえば、
- 工具の定位置を分かりやすくする
- 置く場所を表示する
- 確認する項目を決める
などです。
一度だけ頑張るのではなく、頑張らなくても良い状態を保ちやすくする。
ここがポイントです。
しつけ|決めたルールを「当たり前」にする
最後が「しつけ」です。
決めたルールがあっても、誰も守らなければ良い状態は維持できません。
- 使った工具を決められた場所へ戻す
- 物を決められた場所へ置く
- 異常に気づいたら報告する
こうした基本を繰り返し、習慣にしていきます。
「上司に言われたからやる」のではなく、安全で仕事をしやすい状態を維持するために続ける。
そこまでできて、5Sが現場に定着していくのだと思います。
5Sは「掃除」ではない|目的は仕事をしやすくすること
ここまで読むと、5Sは単なる掃除とは少し違うことが分かると思います。
わたしが新人の方に伝えたいのは、
「きれいになった」で5Sを終わらせるのはもったいない
ということです。
「きれいになった」で終わる5Sはもったいない
たとえば、工具が棚の中にきれいに並んでいるとします。
見た目は完璧です。
しかし、毎日使う工具が棚の一番奥にあり、作業するたびに取り出すのが大変だったらどうでしょうか。
見た目はきれいでも、仕事はしにくいですよね。
逆に、派手な改善ではなくても、
- 必要な物がすぐ見つかる
- すぐ取り出せる
- 使った後も迷わず戻せる
そんな状態なら、作業はしやすくなります。
5Sでは「きれいか」だけでなく、「無駄や困りごとが減ったか」まで見る。
この視点を持ってみてください。
「探す・迷う・戻る・危ない」を見つけてみる
新人の方でも改善ポイントを見つけやすいように、わたしなら次の4つの視点で現場を見ます。
- 探す:工具・資材・書類などを毎日のように探していないか
- 迷う:使った物をどこへ戻せばいいか迷っていないか
- 戻る:必要な物を取り忘れて何度も往復していないか
- 危ない:作業場所や通路に危険につながりそうな状態はないか
普段は当たり前になっていることでも、この4つの視点で見ると、
「これ、改善できるかもしれない」
という場所が見つかることがあります。
改善のスタートは、「やりにくい」に気づくことです。
【具体例】工場・倉庫ですぐ見つかる5S改善5選
ここからは、工場や倉庫で考えられる5S改善の具体例を紹介します。
職場によって設備や作業方法は異なるため、そのまま自己判断で変更せず、「自分の職場ならどうだろう?」と考えるヒントとして読んでください。
具体例1|よく使う工具を「取りやすい場所」へ
たとえば、作業で何度も使う工具が棚の奥にあるとします。
そのたびに手前の物を動かして取り出していれば、小さな手間が毎回発生します。
そこで、
「使用頻度の高い工具を取りやすい場所へ配置できないか?」
と考えてみます。
さらに定位置が分かる表示などがあれば、使用後も戻しやすくなります。
ポイントは、ただ並べ替えるのではなく、使う人の動きまで考えることです。
具体例2|「探す」を減らす定位置・表示
「あの工具、どこにありますか?」
新人の頃は、先輩に何度も聞くことがあると思います。
でも、誰が見ても置き場所が分かる状態になっていれば、探したり聞いたりする時間を減らせます。
工具・備品・資材などについて、職場のルールに沿って定位置を明確にする。
必要に応じて表示を分かりやすくする。
こうした小さな改善でも仕事はしやすくなります。
「知っている人しか分からない現場」から「初めての人でも分かりやすい現場」へ。
これは新人教育という面でも役立つ考え方です。
具体例3|不要な物を減らして作業スペースを確保する
現場では、
「いつか使うかもしれない」
という物が少しずつ増えていくことがあります。
その結果、必要な物が奥へ追いやられたり、作業スペースが狭くなったりします。
そこで、
「今の作業で本当に必要なのか?」
という視点で確認します。
「使っていないから捨てよう」と自己判断するのは避けてください。
- 不要と思われる物を見つける
- 責任者へ確認する
- 職場のルールに従って処置する
具体例4|ピッキング棚を「間違えにくい状態」にする
倉庫なら、ピッキング棚にも改善ポイントがあります。
- 似た商品があって分かりにくい
- 表示が見づらい
- どこへ戻すのか迷う
こうした状態でミスが発生したとき、
「作業者がもっと注意すればいい」
だけで終わらせないことも大切です。
「そもそも間違えにくい状態にできないか?」
という視点で考えます。
人の注意力だけに頼らず、作業する環境から改善できないかを見ることがポイントです。
ピッキングで品番や数量の間違いが続いている方は、ピッキングミスが多い5つの原因と「気をつける」だけに頼らない対策も参考にしてください。
具体例5|移動・往復が多い作業を見直す
工具を取りに行く。
作業場所へ戻る。
次に別の物が必要になって、また取りに行く。
こうした往復が毎日発生しているなら、改善できる可能性があります。
「もっと速く歩こう」と考える前に、
「この往復そのものを減らせないか?」
と考えてみます。
必要な物の配置や作業前の段取りなど、原因はいくつか考えられます。
速く動くより、無駄に動かなくていい状態を作る。
これも改善です。
ピッキング作業そのものが遅いと感じる方は、ピッキングが遅い5つの原因と速くするコツで、探す時間や無駄な移動の減らし方を詳しく紹介しています。
たった30秒の「探し物」も積み重なると大きな時間になる
5Sで改善するものは、一つひとつを見ると小さな無駄かもしれません。
たとえば、工具や資材を探す時間が1回30秒だったとします。
仮に1日20回発生すれば、
30秒 × 20回 = 600秒
つまり、1日10分です。
月20日勤務と仮定すると、
10分 × 20日 = 200分
約3時間20分になります。
もちろん、これは効果を説明するための仮定であり、実際の時間は職場によって異なります。
ただ、
「たった30秒だから問題ない」と思っていたことも、毎日繰り返せば大きな無駄になる可能性があります。
だから改善活動では、大きな問題だけではなく、
「毎日ちょっと面倒」
という作業にも目を向けてみてください。
そこに改善のヒントが隠れていることがあります。
【改善活動10年以上】5S改善は「困りごとの洗い出し」から始めよう
「改善と言われても、何から考えればいいのか分からない」
そんな方もいると思います。
わたし自身、改善活動に関わる中で大切にしてきたのが、まず作業を洗い出すことです。
いきなりすごい改善案を考える必要はありません。
次の5STEPで考えてみてください。
STEP1|普段の作業を洗い出す
まず、自分が普段どんな作業をしているのか振り返ります。
- 工具を取る
- 材料を準備する
- 商品をピッキングする
- 確認する
- 片付ける
普段は無意識に行っている作業を、一度分けて見てみます。
STEP2|「探す・迷う・戻る・危ない」を見つける
次に、それぞれの作業で困っていることを探します。
- 毎朝、同じ工具を探している
- 戻す場所が人によって違う
- 必要な物を取り忘れて戻ることが多い
- 通るときに少し危ないと感じる場所がある
改善のスタートは、「やりにくい」に気づくことです。
STEP3|「なぜ?」を考える
次に、その困りごとがなぜ発生しているのか考えます。
たとえば、
「工具を探す」
という問題なら、
- なぜ探している?
- 置き場所が毎回違うから
- なぜ毎回違う?
- 戻す場所が明確になっていないから
というように考えます。
原因が分かれば、対策も考えやすくなります。
「探さないように気をつける」より、「探さなくても済む状態を作れないか?」と考える。
ここが改善のポイントです。
STEP4|小さな改善案を考える
原因が分かったら、改善案を考えます。
- 定位置を決める
- 表示を分かりやすくする
- 配置を見直す
- 確認方法を決める
改善というと、大きな設備投資をイメージするかもしれません。
でも、毎日発生している小さな無駄を一つ減らすことも、立派な改善だとわたしは思います。
STEP5|勝手に変えず、責任者へ相談する
ここは新人の方に特に覚えておいてほしいポイントです。
良い改善案を思いついても、自分の判断だけで現場を変更しないでください。
自分にとって便利でも、別の工程では使いにくくなる可能性があります。
安全や品質へ影響することも考えられます。
- 気づく
- 改善案を考える
- 上司・責任者へ相談する
- 職場のルールに従って実施する
改善活動は、一人だけ仕事がしやすくなればいいわけではありません。
現場全体で安全に、正確に、仕事をしやすくすることを考えましょう。
5Sで失敗しやすい3つのパターン
5Sは、やり方を間違えると「やっただけ」で終わってしまうことがあります。
ここでは、特に注意したい3つを紹介します。
失敗1|「全部捨てれば整理」と考える
整理とは、何でも捨てることではありません。
必要な物と不要な物を分けることです。
使用頻度が低くても、必要な物はあります。
物を減らすことそのものを目的にしないでください。
勝手に廃棄せず、職場の基準に従って判断することが大切です。
失敗2|きれいに並べることが目的になる
棚に工具が一直線に並んでいる。
床もきれい。
見た目は整っています。
でも、
- 取りにくい
- どこへ戻すか分からない
- 必要な物を毎回探している
という状態なら、改善できる部分があります。
整頓では、
- 使いやすいか
- 見つけやすいか
- 戻しやすいか
という視点も持ってみてください。
失敗3|一度だけ大掃除して終了する
5Sでよくあるのが、
「今日は5Sの日だから、みんなで片付けよう」
と一気にきれいにして終了することです。
その日はきれいになります。
しかし、しばらくすると元へ戻る。
それでは同じことの繰り返しです。
大切なのは、きれいになった状態をどう維持するかです。
定位置や表示、戻すルールなどを決めて、良い状態を続けやすくする。
整理・整頓・清掃で終わらず、清潔・しつけまで意識することが5Sを定着させるポイントです。
現場歴20年で感じた「新人だからこそ気づける改善」がある
新人の方は、
「まだ仕事を覚えている途中だから、改善なんてできない」
と思うかもしれません。
でも、わたしは新人だからこそ気づける改善ポイントもあると思っています。
長く同じ職場で働いていると、
「昔からこうだから」
「いつもこうしているから」
と、不便な状態にも慣れてしまうことがあります。
そこへ新人が入ると、
- どうしてこの工具はこんなに遠い場所にあるんだろう?
- なぜ、この置き場所は分かりにくいんだろう?
- 毎回ここまで取りに行く必要があるのかな?
と疑問を持つことがあります。
その「なぜ?」が改善のヒントになることがあります。
もちろん、
「おかしいと思ったから変えておきました」と勝手に変更するのは避けてください。
代わりに、
「ここでいつも迷うのですが、もう少し分かりやすくする方法はありませんか?」
「この工具を取りに行く回数が多いのですが、配置を見直すことはできますか?」
と、先輩や責任者へ相談してみる。
改善の第一歩は、大きなアイデアを出すことではありません。「これ、少しやりにくいな」に気づくことです。
まとめ|5Sは「きれいにする活動」から「仕事をしやすくする改善」へ
今回は、工場・倉庫における5Sの意味と、現場で使える改善の具体例について紹介しました。
最後に、5Sを振り返ります。
- 整理:必要な物と不要な物を分ける
- 整頓:必要な物を探さず使える状態にする
- 清掃:きれいにしながら異常にも気づく
- 清潔:良い状態を維持しやすくする
- しつけ:決められたルールを習慣にする
5Sは、現場をきれいに見せるためだけの活動ではありません。
わたしが大切だと思っているのは、
「探す・迷う・戻る・危ない」を減らすこと。
工具を探す30秒。
必要な物を取りに戻る1往復。
置き場所が分からず迷う時間。
一つひとつは小さくても、毎日繰り返せば大きな無駄になります。
そして、危険につながる状態は「いつものこと」で済ませてはいけません。
いきなり大きな改善をする必要はありません。
次の勤務でまず、
「今日、自分は何を探しただろう?」
と一つだけ振り返ってみてください。
見つかったら、
- なぜ探したのか
- 置き場所が分かりにくいのか
- 定位置を分かりやすくできないか
と考えてみます。
そして改善できそうなことがあれば、職場のルールに従って上司や責任者へ相談する。
気づく → 原因を考える → 改善案を出す → 確認して実行する。
この小さな積み重ねが、仕事をしやすい現場につながっていきます。
5Sだけでなく、倉庫内作業全体の効率化や安全対策について知りたい方は、倉庫内作業のコツ5選|ミスを減らして作業を速くする方法と安全対策も参考にしてください。
安全に、正確に、そして無駄なく働ける現場を作る。
そのために、5Sを活用していきましょう。
最後に、工場・倉庫の5Sについてよくある疑問をまとめます。
工場・倉庫の5Sに関するよくある質問
Q.工場や倉庫の5Sとは何ですか?
A.5Sとは、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の5つを指します。
単に掃除するだけではなく、必要・不要を分ける、物の定位置を決める、良い状態を維持するなど、安全で働きやすい現場を作るための基本的な改善活動です。
Q.5Sと整理整頓は同じですか?
A.同じではありません。
整理と整頓は5Sの一部です。
5Sには、整理・整頓に加えて清掃・清潔・しつけまで含まれます。
一度片付けるだけではなく、良い状態を維持し、習慣として定着させるところまで考えます。
Q.5S活動は何から始めればいいですか?
A.まず普段の作業を振り返り、「探す・迷う・戻る・危ない」が発生していないか確認してみてください。
困りごとを見つけたら、なぜ発生しているのかを考え、改善できそうなことがあれば上司や責任者へ相談します。
Q.5S改善の具体例には何がありますか?
A.よく使う工具を取りやすい場所にする、物の定位置や表示を分かりやすくする、不要な物を整理する、ピッキング棚を間違えにくくする、無駄な往復を減らすなどが考えられます。
実際に配置や設備を変更する場合は、自己判断せず職場のルールや責任者の判断に従ってください。
Q.新人でも5Sの改善提案をしていいですか?
A.改善につながりそうな気づきを伝えることはできます。
むしろ、新人だからこそ「分かりにくい」「取りにくい」「迷いやすい」と気づけることもあります。
ただし、自分の判断だけで設備や配置を変更せず、「ここが分かりにくい」「こうすると使いやすそう」と先輩や責任者へ相談する形にしましょう。
