「自分だけピッキングが遅い気がする……」
「周りの人はどんどん終わっているのに、自分はまだ半分しか終わっていない」
「急いだら、今度は商品を間違えてしまった」
倉庫でピッキング作業を始めたばかりなら、こんな悩みを抱えることもあると思います。
わたしは工場・倉庫の現場で20年以上働き、改善活動や安全に関する取り組みにも10年以上携わってきました。
その経験から、新人の方にまず伝えたいことがあります。
ピッキングが遅い=あなたの動きが遅い、とは限りません。
本当に作業が速い人は、ただ急いで歩いたり、商品を素早く取ったりしているわけではありません。
探す・迷う・戻る・間違える・やり直す。
こうした無駄な時間が少ないから、結果として作業が速いのです。
この記事では、ピッキングが遅くなる5つの原因と、安全性や正確性を落とさずスピードアップするコツを、現場経験をもとに紹介します。
「もっと急がなきゃ」と焦っている方ほど、まずは自分がどこで時間を使っているのかを確認してみてください。
この記事でわかること
- ピッキングが遅くなる5つの原因
- 初心者でも実践しやすいピッキングのコツ
- 無駄な移動を減らして作業を速くする考え方
- ピッキングミスややり直しを減らす確認方法
- 速くしようとして逆にやってはいけないこと
ピッキングが遅い=「動きが遅い」とは限らない
新人の頃は、どうしても周りのスピードが気になります。
隣の人はもう終わっている。
自分はまだ商品を探している。
そんな状態になると、
「もっと速く歩かないと」
「もっと手を速く動かさないと」
と焦ってしまうと思います。
でも、わたしなら新人の方には、「まず、急がなくて大丈夫です」と伝えます。
なぜなら、ピッキングの速さは、身体を動かす速さだけで決まるものではないからです。
速い人は「急いでいる」のではなく無駄が少ない
たとえば、商品を探すのに30秒かかったとします。
それが50回発生すれば、合計で25分です。
一方、商品の場所や確認方法が分かっていて、1回あたりの「探す時間」を20秒減らせれば、それだけでも大きな違いになります。
速く歩くことより、探さない。
急いで商品を取ることより、迷わない。
この考え方が大切です。
仕事を速くしたいとき、多くの人は「作業そのものを速くする方法」を考えます。
しかし現場では、作業をしていない時間を減らすことも立派なスピードアップです。
焦る→ミス→やり直す、では逆に遅くなる
もう一つ注意したいのが、焦りによるミスです。
周りについていこうとして確認を省く。
違う商品を取る。
数量を間違える。
そして、元へ戻してもう一度ピッキングする。
これでは、かえって時間がかかります。
わたし自身も、仕事に慣れてきた頃に積み込みを間違えた経験があります。
新人の頃より仕事を覚え、「もう大丈夫」という気持ちがどこかにあったのだと思います。
この経験から感じたのが、慣れてきたときほど基本的な確認を省いてはいけないということです。
速さを求めて確認をなくすのではありません。
安全 → 正確 → 速さ。
わたしは、この順番が大切だと考えています。
倉庫内作業全体で「安全・正確さ・速さ」をどう身につければいいのかは、倉庫内作業のコツ5選をまとめた記事で詳しく紹介しています。
なぜ遅い?ピッキングに時間がかかる5つの原因
「自分はピッキングが遅い」と感じていても、原因が分からなければ改善方法も見つかりません。
まずは、どこで時間を使っているのかを分けて考えてみましょう。
原因1|商品や棚を探す時間が長い
新人の頃に時間がかかりやすいのが、商品を探す作業です。
- どの棚に何があるのか分からない
- 棚まで来ても目的の商品が見つからない
- 商品名だけを見て探している
このような状態では時間がかかります。
ただし、入ったばかりなら場所が分からないのは当然です。
最初から倉庫内の商品を全部覚えようとする必要はありません。
まずは職場のルールに従って、棚番号やロケーションを確認してから商品を探す習慣をつけましょう。
ロケーションとは、商品が保管されている棚や位置を示す情報のことです。
原因2|ピッキングリストを十分に確認せず動き始めている
ピッキングリストとは、取る商品や数量、保管場所などが記載された作業指示のことです。
早く作業を始めようとして、リストの一番上だけを確認してすぐ歩き始めていないでしょうか。
1個目の商品を取る。
そこで初めて次の商品を見る。
すると、
「あれ、さっき通った場所だ」
となることがあります。
もちろん、職場によってピッキング方法やルートは異なります。
決められた作業方法がある場合は、それを優先してください。
そのうえで、作業前に確認できる範囲で全体を把握しておくと、途中で迷う時間を減らせます。
動き始める前の確認も、作業の一部です。
原因3|同じ場所を何度も往復している
ピッキングが遅いと感じると、歩く速度を上げようとする人もいます。
しかし、その前に確認してほしいのが移動距離です。
たとえば、同じ通路を何度も往復しているなら、いくら速く歩いても移動時間は長くなります。
そこで、
「もっと速く歩けないか?」ではなく、「この往復を減らせないか?」
と考えてみてください。
職場で決められた動線やルートがある場合は、それを守ることが前提です。
安全を犠牲にして歩行速度を上げるのは避けてください。
原因4|商品を見つけてから確認に時間がかかる
商品が見つかっているのに、その後の確認に時間がかかるケースもあります。
「これで合っているかな?」
「品番はどこを見るんだろう?」
「似た商品があるけれど、どっちだろう?」
毎回ここで迷えば、作業時間は長くなります。
ポイントは、何を確認するのかを固定することです。
- 品番
- 数量
- 必要に応じてロット
ロットとは、製造や管理上、同じ条件でまとめられた製品の単位や、それを識別する番号などを指します。
職場で確認項目が決められている場合は、その順番や方法に従います。
「商品全体をなんとなく見る」のではなく、確認すべき場所が分かれば、正確性を保ちながら迷う時間を減らせます。
原因5|ミスによる「やり直し」が発生している
わたしが特にもったいないと思うのが、ミスによるやり直しです。
違う商品を取る。
数量を間違える。
ピッキングを漏らす。
その結果、商品を戻してもう一度取りに行けば、その分だけ時間がかかります。
ミス防止もスピードアップの一つだと考えてください。
数秒の確認をなくして速くするより、やり直しを1回なくすほうが、結果として効率がよくなることもあります。
【現場歴20年】ピッキングを速くする5つのコツ
ここからは、ピッキングが遅いと悩んでいる方が実際に何を改善すればいいのか紹介します。
特別なテクニックではありません。
新人でも意識しやすい基本から、一つずつ取り組んでみてください。
コツ1|作業前にピッキングリストを確認する
まず意識してほしいのが、いきなり動き始めないことです。
職場の作業方法に従いながら、作業前に必要な情報を確認します。
- 何を取るのか
- 数量はいくつか
- どこにあるのか
先に分かることを確認してから動けば、途中で何度も立ち止まることを減らせます。
一見すると、確認している時間は「止まっている時間」です。
しかし、この数十秒が、後の数分を減らしてくれる場合があります。
コツ2|棚番号・ロケーションを見る癖をつける
新人の方ほど、商品名だけを見て探してしまうことがあります。
しかし、広い倉庫の中から目視だけで商品を探せば時間がかかります。
棚番号やロケーションが管理されている職場なら、それを活用します。
イメージとしては、
倉庫全体 → 商品
ではなく、
エリア → 棚 → 位置 → 商品
と、探す範囲を狭めていく感じです。
最初からすべての商品位置を暗記する必要はありません。
仕事を繰り返していれば、よく扱う商品の位置などは少しずつ覚えていきます。
コツ3|「速く歩く」より動線を意識する
次に、自分の移動を振り返ってみてください。
- 同じ通路を何度も通っていないか
- 取り忘れて戻ることが多くないか
- 余計な往復が発生していないか
ピッキングのスピードアップというと、どうしても「速く歩く」と考えがちです。
しかし、わたしが大切だと思うのは、
歩く速度ではなく、歩く距離を減らすことです。
ただし、自分の判断で勝手にルートや作業方法を変更するのは避けてください。
職場で決められた作業標準や安全ルールを守ったうえで、改善できそうな点があれば責任者へ相談しましょう。
コツ4|確認するポイントを毎回同じにする
確認を速くするために、確認そのものを省いてはいけません。
大切なのは、確認方法を迷わない状態にすることです。
たとえば、
- 品番を見る
- 数量を見る
- 必要ならロットを見る
このように、職場で決められた確認項目を毎回同じように確認します。
仕事に慣れてくると、
「この商品なら分かる」
「いつも扱っているから大丈夫」
と思うこともあります。
ですが、わたし自身、慣れてきた頃にミスを経験しています。
「慣れたから確認しなくてもいい」という判断には注意してください。
記憶で作業するのではなく、確認して作業する。
慣れてきた人にこそ、意識してほしいポイントです。
コツ5|自分の作業を洗い出して「遅い場所」を見つける
これは、わたし自身が改善のために行ってきた方法です。
まず、普段やっている作業を一度洗い出します。
そして、
- どこで時間がかかっているか
- どこで間違えやすいか
- どの作業で迷っているか
を整理します。
わたしの場合は、注意が必要な作業を洗い出し、セルフチェックするポイントを作るようにしました。
- 問題を見つける
- 原因を考える
- 確認するポイントを決める
- 作業の中で実行する
ただ「もっと気をつける」で終わらせないことが大切です。
ピッキングでも、
- 商品を探すのが遅いのか
- 移動に時間がかかっているのか
- 確認で迷っているのか
- ミスによるやり直しが多いのか
と原因を分けて考えてみてください。
「自分は遅い」で終わらせず、「どこで遅くなっているのか」まで分ける。
原因が一つ見つかれば、改善方法も考えやすくなります。
ピッキングを速くしようとして「やってはいけない」3つのこと
速くなりたいという気持ちは悪いものではありません。
ただし、速さを求めるあまり、やってはいけないこともあります。
NG1|走る・急ぐなど安全を犠牲にする
倉庫内には、自分以外にも人がいます。
荷物や台車があり、現場によってはフォークリフトなども動いています。
その中で無理に急いだり、安全を犠牲にしたりするのは避けてください。
数秒縮めることより、安全に作業を終えることのほうが大切です。
勤務先で決められている安全ルールを最優先してください。
NG2|確認を省いて時間を短縮する
もう一つ避けたいのが、
「確認すると遅くなるから省こう」
という考え方です。
確認を省いたことで商品を間違え、再び取りに行くことになれば、むしろ遅くなります。
わたしが積み込みを間違えたのも、仕事に慣れてきた頃でした。
「慣れた=確認しなくていい」ではありません。
確認をなくすのではなく、正しい確認を習慣化する。
そのほうが安定して作業できるようになります。
NG3|分からないまま自己判断する
新人の頃は、先輩へ何度も質問するのが申し訳なく感じることもあると思います。
「これくらい自分で判断しないと」
と思うかもしれません。
しかし、分からないまま自己判断で進めると、ミスややり直しにつながる可能性があります。
わたしなら新人の方には、
「分からないことを確認するのも仕事の一つです」
と伝えます。
もちろん、教えてもらったことはメモを取るなど、同じことを何度も聞かなくて済む工夫も大切です。
それでも判断できないときは、無理に自己判断せず、上司や責任者へ確認してください。
ピッキングが速い人には「3つの余裕」がある
長く現場で働いていると、本当に仕事が速い人ほど、ずっと慌てているわけではないと感じます。
むしろ、必要なところではきちんと止まっています。
- 作業前に確認する余裕
- 商品を取るときに確認する余裕
- 分からないときに止まる余裕
一見すると、止まっている時間は無駄に見えるかもしれません。
でも、10秒確認したことで、10分かかるやり直しを防げたとしたらどうでしょう。
結果的には、確認した人のほうが速く仕事を終えられます。
本当にピッキングが速い人とは、止まるべきところで止まれる人です。
何でも急ぐのではありません。
急がなくていいところで無駄をなくし、確認すべきところでは確認する。
このメリハリが、正確さとスピードの両立につながります。
新人はピッキングが遅くても焦らなくていい
今まさに「自分はピッキングが遅い」と悩んでいる方へ、最後に一つ伝えたいことがあります。
新人のうちは、ベテランと同じスピードでできなくても焦る必要はありません。
経験者は、商品の場所を知っています。
作業手順も身についています。
どこを確認すればいいのかも分かっています。
つまり、新人とはスタート地点が違います。
だから、単純にスピードだけを比べる必要はありません。
代わりに、昨日の自分と比べてみてください。
- 昨日より探す時間が減ったか
- 迷う回数が減ったか
- 戻る回数が減ったか
- やり直しが減ったか
昨日より一つ無駄を減らせたなら、それも立派な上達です。
まとめ|ピッキングを速くするコツは「急ぐこと」ではなく無駄を減らすこと
今回は、ピッキングが遅くなる5つの原因と、スピードアップするためのコツを紹介しました。
5つのポイントを振り返ります。
- 作業前にピッキングリストを確認する
- 棚番号・ロケーションを見る癖をつける
- 速く歩くのではなく、無駄な移動を減らす
- 確認するポイントを固定する
- 自分がどこで遅くなっているのかを見つけて改善する
ピッキングが遅いと、どうしても「もっと急がないと」と考えてしまいます。
でも、わたしが20年以上現場で働いてきて感じるのは、
ピッキングが速い人とは、急いでいる人ではありません。迷わず、間違えず、やり直しが少ない人です。
最初から速さだけを求めなくても大丈夫です。
まず安全に。
次に正確に。
そして、少しずつ無駄を減らしていく。
安全 → 正確 → 速さ。
この順番を大切にしてみてください。
次の勤務では、「探す・迷う・戻る・やり直す」のうち、一つだけ意識してみましょう。
昨日より一つ減らせたなら、昨日より確実に前へ進んでいます。
焦らず、正しい作業を一つずつ積み重ねていきましょう。
最後に、ピッキングについてよくある疑問をまとめます。
ピッキングに関するよくある質問
Q.ピッキングが遅い人の原因は何ですか?
A.商品や棚を探す時間が長い、ピッキングリストを十分に確認していない、無駄な往復が多い、商品確認で迷っている、ミスによるやり直しが発生しているなどが考えられます。
まず「自分がどこで時間を使っているのか」を分けて確認することから始めてみてください。
Q.ピッキングを速くする一番のコツは?
A.単純に歩く速度を上げるのではなく、探す・迷う・戻る・やり直すといった無駄を減らすことです。
職場の作業標準を守りながら、作業前の確認、ロケーションの把握、動線の見直しなどに取り組みましょう。
Q.ピッキングが遅い新人は仕事に向いていませんか?
A.最初からベテランと同じ速度で作業できないからといって、向いていないとは限りません。
経験者は商品の場所や確認方法、作業手順をすでに把握しています。
まず正確な作業を覚え、少しずつ無駄な時間を減らしていくことが大切です。
Q.ピッキングでは速さと正確さのどちらが大切ですか?
A.どちらも重要ですが、速さを優先して確認や安全を犠牲にするべきではありません。
まず職場の安全ルールと正しい作業手順を守り、正確に作業できる状態を作ったうえで無駄を減らしていきましょう。
Q.ピッキングミスを減らすコツは?
A.「気をつける」だけではなく、品番・数量・ロットなど、何を確認するのかを明確にすることがポイントです。
自分が間違えやすい工程を洗い出し、職場のルールに沿って確認を習慣化していきましょう。
ピッキングだけでなく、倉庫内作業全体を効率よく進める方法を知りたい方は、「倉庫内作業のコツ5選」も参考にしてください。
5Sや動線改善、ミスを防ぐ確認方法、フォークリフト作業で意識したい安全対策まで、現場歴20年以上の経験をもとに詳しく解説しています。
