「もっと段取りを考えて仕事して」
「作業を始める前に、次のことまで考えて」
先輩からこう言われても、工場で働き始めたばかりなら、
「具体的に何をすれば段取りが良くなるの?」
と悩むこともあると思います。
仕事が遅いと感じると、
「もっと速く歩こう」
「手を速く動かそう」
と考えてしまいがちです。
しかし、わたしは工場で20年以上働いてきて、
仕事が速い人ほど、ただ急いで動いているわけではない
と感じています。
必要な工具を探す。
材料を取りに戻る。
次に何をするか迷う。
分からないことが出てきて作業が止まる。
こうした、
「探す・戻る・迷う・待つ」時間を、作業前の段取りによって減らしている
のです。
段取りとは、必要な物をそろえることだけではありません。
作業を始めたあとに止まる原因を、始める前にできるだけ減らしておくこと。
これも大切な段取りです。
わたし自身も、指示書や図面の見間違いによる取り間違い、設定間違い、測定間違いなどを経験してきました。
その経験から作業を分けて考え、どこで確認が必要なのかを整理するようになりました。
そこで気づいたのが、
「何をする?」
「何が必要?」
「どこで確認する?」
まで作業前に考えておくことの大切さです。
この記事では、工場勤務20年以上の経験から、工場の段取りが良くなる7つのコツを新人の方にも分かりやすく紹介します。
段取り改善は、安全確認や品質確認を省いて作業を速くすることではありません。
実際の作業では、勤務先の作業手順、安全ルール、品質基準、責任者の指示を優先してください。
- 工場における「段取り」の考え方
- 仕事の段取りが悪くなりやすい6つの原因
- 工場の段取りを良くする7つのコツ
- 「探す・戻る・迷う・待つ」を減らす方法
- 作業前に確認しておきたいポイント
- 段取り改善でやってはいけないこと
段取りを良くする目的は、必要な確認まで削って急ぐことではありません。作業前にできる準備を済ませ、「作業中に止まる原因」を減らすことです。
そもそも工場の「段取り」とは?
「段取り」と聞くと、工具や材料を準備することを思い浮かべる人が多いかもしれません。
もちろん、それも段取りの一つです。
でも、現場で仕事をスムーズに進めるためには、もう少し広く考える必要があります。
段取り=作業を始めたあとに止まる原因を、始める前にできるだけ減らしておくこと。
わたしは、この考え方を大切にしています。
段取りは「必要な物をそろえる」だけではない
たとえば、作業前に工具だけ準備したとします。
ところが、いざ始めると、
- 「次は何をするんだっけ?」
- 「この設定で合っているのかな?」
- 「必要な材料が足りない」
となれば、そのたびに作業が止まります。
そこで作業前に、
- 何をするのか
- どの順番で進めるのか
- 何が必要なのか
- どこで確認するのか
- 分からないことは残っていないか
を確認しておきます。
事前にできる準備を済ませておくことが、段取りを良くする第一歩です。
仕事が遅い原因は「動く速度」だけではない
仮に、
- 工具を探すのに3分
- 材料を取りに戻るのに3分
- 手順が分からず確認するのに3分
かかったとします。
これだけで1日9分です。
月20日なら、
9分 × 20日 = 180分
つまり、約3時間になります。
これは説明用の仮定ですが、伝えたいのは、
1回数分の小さなロスでも、毎日繰り返せば大きくなる
ということです。
手を速くする前に、止まる回数を減らせないか考える。
「動作を速くする」より先に、動かなくてもよかった時間を減らせないか見てみてください。
工場で段取りが悪くなりやすい6つの原因
段取りを良くするには、まず自分がどこで止まっているのかを知ることが大切です。
ここでは、工場で起こりやすい6つの原因を紹介します。
1.作業を始めてから必要な物を集めている
作業を始めた。
工具がない。
取りに戻る。
作業を再開したら、今度は別の材料が必要になった。
これを繰り返せば、移動する回数が増えます。
「すぐ手を動かす=作業開始」ではありません。
始めるための準備が整っているか確認するところまでが仕事です。
2.次の作業を確認せず「とりあえず」始めている
目の前に仕事があると、すぐ手をつけたくなることがあります。
でも、次に何をするのか分かっていなければ、一つ終わるたびに考える時間が発生します。
新人のうちは、何工程も先まで読む必要はありません。
まず「これが終わったら次は何?」と、一つ先を見る。
これだけでも変わります。
3.工具や材料の置き場所が分からない
「さっき使った工具、どこに置いた?」
「この材料はどこだろう?」
という探す時間も積み重なります。
ここで関係するのが5Sです。
職場で決められた置き場所へ戻し、必要な物を必要なときに取り出せる状態を作ります。
速く探すより、探さなくていい状態を作る。
工具や材料の置き場所、整理・整頓について詳しく知りたい方は、工場・倉庫の5Sとは?仕事が楽になる改善の具体例と進め方も参考にしてください。
4.作業順序を頭の中だけで覚えようとしている
新人の頃は覚えることが多いため、
「次は何だったかな?」
となることがあります。
頭の中だけですべて処理しようとせず、職場で決められた作業手順書やチェックリストなどがあれば活用します。
何も見ずにできることより、正しい手順を確認しながら再現できることを優先する。
5.分からないことを作業開始後まで残している
作業内容を確認した段階で、
「この部分はどうすればいいんだろう?」
と思った。
でも、とりあえず始める。
そして、その工程になってから作業が止まる。
こうしたケースもあります。
分からないことを自己判断で進めないことも、段取りの一つです。
作業前の時点で分かっている不明点は、勤務先のルールに従って必要な相手へ確認しておきます。
6.スピードを優先して必要な確認を省いている
ここは特に注意してほしいところです。
段取り改善は、安全確認や品質確認を省略して時間を短縮することではありません。
減らしたいのは、
- 不要な探し物
- 無駄な移動
- 取りに戻る時間
- 迷っている時間
- 不要な手戻り
です。
安全や品質に必要な確認まで「ムダ」と考えないでください。
【現場歴20年が実践】工場の段取りが良くなる7つのコツ
ここからは、段取りを良くするためのコツを7つ紹介します。
全部を一度に変える必要はありません。
まず、自分ができそうなところから一つ試してみてください。
コツ1|作業内容を始める前に確認する
段取りの最初は、
「これから何をするのか?」
を理解することです。
作業内容そのものが曖昧な状態では、正しい準備もできません。
- 何をするのか
- どの手順で進めるのか
- どこまで作業するのか
勤務先の指示や手順に従って確認します。
分からないところを「たぶん」で進めないこと。
コツ2|必要な工具・材料を先にそろえる
作業内容が分かったら、
「この作業には何が必要?」
と考えます。
工具。
材料。
作業に必要な情報。
職場のルール上、事前に準備できる物があれば整えておきます。
必要な物を、職場で決められた方法で準備する。
ただし、必要そうな物を何でも作業場所へ持ち込めばいいわけではありません。
物を置きすぎれば、通路や作業スペースを圧迫したり、取り違えの原因になったりする場合があります。
コツ3|作業を頭の中で一度「通してみる」
わたしが新人の方におすすめしたいのが、作業を始める前に一度流れを確認することです。
たとえば、
- 最初に何をする?
- 次に何を使う?
- どこで確認する?
- その次は何をする?
と順番を追います。
すると、
「次の作業でこの工具が必要だ」
「ここで確認が必要だった」
と、始める前に気づけることがあります。
段取りが良い人は、全部を暗記しているのではなく、始める前に仕事の流れを確認しています。
コツ4|よく使う物の置き場所を意識する
必要な工具を毎回探しているなら、速く歩くより先に、
「なぜ探しているのか?」
を考えます。
- 置き場所が分かりにくい
- 使用後に戻されていない
- 似た物が混ざっている
など、原因はいろいろあります。
探す時間を減らすことは、作業前の段取りを安定させることにもつながります。
置き場所や配置を自己判断で変更せず、改善できそうな点があれば責任者へ相談・提案してください。
コツ5|間違えやすい工程を先に把握する
これは、わたし自身の失敗から特に大切だと感じていることです。
わたしもこれまで、
- 指示書や図面の見間違い
- 取り間違い
- 設定間違い
- 測定間違い
などを経験しました。
そこで、作業を分けて、
「自分はどこで間違いやすいのか?」
を確認するようになりました。
たとえば、過去に設定で間違えたことがあるなら、同じ作業を行う前に、職場の手順上どこで確認する必要があるのかを意識します。
段取りは物を準備するだけではありません。
「ここは間違えやすいから確認する」と、始める前に分かっている状態を作ることも段取りです。
見間違い・設定間違い・測定間違いなどを減らしたい方は、工場でミスが多い人へ|同じ失敗を減らす7つの対策も参考にしてください。
コツ6|分からないことは始める前に確認する
指示書の意味が分からない。
図面の見方に自信がない。
設定方法が分からない。
必要な材料が判断できない。
こうした状態で、
「やりながら考えよう」と進めないこと。
特に、安全・品質に関係する判断では、自己判断してはいけない場合があります。
自分で確認できる範囲を確認したうえで、
「ここまでは確認しましたが、この部分が分かりません」
と必要な相手へ相談します。
作業が止まってから質問するだけではなく、作業前に分かっている疑問を先に確認しておく。
先輩への質問や報告の伝え方に迷う方は、工場の報連相のコツ7選|新人が迷うタイミングと伝え方も参考にしてください。
コツ7|作業後に「どこで止まった?」を振り返る
段取りは、一度考えれば完成ではありません。
仕事が終わったら、
- 今日、何を探した?
- 何を取りに戻った?
- どこで迷った?
- 何を待った?
- どこで確認が必要になった?
と振り返ります。
たとえば、
「作業途中で工具を取りに戻った」
なら、
「次回は作業前に準備できないか?」
と考えます。
「途中で手順が分からなくなった」
なら、
「次回は作業開始前にどこを確認する?」
と考えます。
作業 → 振り返る → 次回の段取りへ反映する。
段取りは、この繰り返しで少しずつ良くできます。
毎日の小さなムダを職場全体の改善へつなげたい方は、工場の改善提案ネタ15選|思いつかない人でも見つかる6つの視点も参考にしてください。
工場の段取りを良くするときにやってはいけない3つのこと
段取りを良くした結果、仕事がスムーズになれば理想的です。
でも、「速くすること」ばかりを考えると、方向を間違える場合があります。
NG1|安全確認や品質確認を省いて時間を短縮する
一番避けたいのが、
必要な確認を省いて速くすること。
です。
段取り改善で減らしたいのは必要な確認ではありません。
減らすのは、探す・戻る・迷う・待つなどの不要なロスです。
「確認を減らせば速くなる」ではなく、
「必要な確認までスムーズに進めるには何を準備する?」
と考えてください。
NG2|自己判断で作業手順を変える
仕事に慣れてくると、
「この順番のほうが速いのでは?」
と思うことがあります。
でも、決められた作業手順には、安全や品質上の理由がある場合があります。
段取り改善と自己流は別物です。
改善できそうなことがあれば、勤務先のルールに従って責任者へ相談・提案します。
NG3|作業場所へ物を置きすぎる
「取りに戻りたくないから全部持ってこよう」
という方法もおすすめできません。
必要以上に物を置けば、作業スペースが狭くなったり、取り違えの原因になったりする可能性があります。
通路や安全面への影響にも注意が必要です。
必要な物を、必要な状態で、決められた場所へ準備する。
「近くに置く」だけが段取りではありません。
段取りが良い人は「一つ先」を考えている
新人の頃は、目の前の作業を間違えずに行うだけでも精一杯です。
それで構わないと思います。
まずは決められた手順で、安全・正確に作業できるようになることが大切です。
そして少し慣れてきたら、
「この作業が終わったら、次は何?」
と考えてみてください。
さらに、
「そのとき何が必要?」
まで考えます。
次に工具を使う
→ 事前に準備できる?
次に確認作業がある
→ 必要な情報はそろっている?
次の工程へ引き渡す
→ 共有しなければならない情報はある?
最初から1時間先、1日先まで完璧に予測する必要はありません。
まず一つ先です。
「次は何?」「そのとき何が必要?」と考える。
わたしは、段取りが良い人とは、先のことをすべて予測できる人ではないと思っています。
「この作業を始めたら、次に何が必要になる?」と、一つ先を考えられる人。
そこから段取りは少しずつ良くなっていきます。
まとめ|速く仕事をしたいなら「作業中に急ぐ」より「作業前に考える」
今回は、工場で仕事の段取りを良くする7つのコツを紹介しました。
- 作業内容を始める前に確認する
- 必要な工具・材料を先にそろえる
- 作業を頭の中で一度通してみる
- よく使う物の置き場所を意識する
- 間違えやすい工程を先に把握する
- 分からないことは始める前に確認する
- 作業後に「どこで止まった?」を振り返る
仕事が速い人は、ずっと急いでいる人ではありません。
作業前に準備し、作業中に発生する「探す・戻る・迷う・待つ」を減らしている人です。
段取りを良くしたいからといって、いきなり全部を変える必要はありません。
明日の仕事で、まず一つだけ、
「この作業が終わったら、次は何?」
と考えてみてください。
そして、
- 途中で工具を探したなら、次回は先に準備できないか
- 材料を取りに戻ったなら、作業前に分からなかったか
- 手順で迷ったなら、事前にどこを確認すればいいか
- 不明点で止まったなら、始める前に相談できなかったか
と振り返ります。
手を速くする前に、止まる回数を減らす。
速く仕事をしたいなら、作業中に急ぐ前に、作業前に一度考える。
そして、必要な安全確認や品質確認は削らない。
安全 → 正確 → スムーズ
この順番を大切にしながら、小さな段取りを積み重ねていきましょう。
工場の段取りに関するよくある質問
Q.工場の「段取り」とは何ですか?
A.工具や材料を準備するだけではなく、作業内容、作業順序、必要な物、確認ポイント、不明点などを事前に把握しておくことも段取りと考えられます。
この記事では、「作業を始めたあとに止まる原因を、始める前に減らしておくこと」と考えています。
Q.工場で段取りが悪いと言われたら、まず何を改善すればいいですか?
A.まず、自分が作業中のどこで止まっているのか確認してみてください。
- 工具を探している
- 材料を取りに戻っている
- 次の作業で迷っている
- 不明点が出て止まっている
などが繰り返されているなら、作業前に準備・確認できないか考えます。
Q.段取りが良い人にはどんな特徴がありますか?
A.目の前の作業だけではなく、
「これが終わったら次は何をする?」
「そのとき何が必要?」
と、一つ先を考える習慣があります。
ただし、新人のうちは先読みより先に、決められた手順で安全・正確に作業できることを優先してください。
Q.仕事を速くするために確認作業を減らしてもいいですか?
A.必要な安全確認や品質確認を自己判断で省略してはいけません。
段取り改善で減らしたいのは、探し物、不要な移動、手戻り、迷う時間などです。
実際の作業では、勤務先の正式な作業手順、安全・品質ルールを優先してください。
Q.工場の段取りを改善するには5Sも必要ですか?
A.5Sは段取り改善と相性があります。
工具や材料の置き場所が分かりやすくなれば、探す時間や余計な移動を減らしやすくなるからです。
ただし、置き場所や配置を個人で勝手に変更せず、職場のルールに従って改善してください。
